放浪の天才数学者エルデシュ

今朝早く、またいつものNHK教育の「人間講座」;ピーター・フランクルの「数学の愛し方」を見た。

今日は、ハンガリーに生れた二人の偉大な数学者、ポール・エルデシュとポール・トゥランについてだった。

無二の親友である二人が学生時代を送った1930年代、ヨーロッパにはファシズムの嵐が吹き荒れていた。
エルデシュは、生涯に1500にも及ぶ論文を書いた数学界の巨人で、自分の頭脳ひとつを引っさげて世界を巡り歩いた“数学の放浪者”とも言われている。

一方のトゥランは、強制労働所という極限状況の中で数学を考え、整数論グラフ理論の分野で大きな業績を上げた偉大な数学者だ。

先日、たまたま僕が買った本が「放浪の天才数学者エルデシュ」(ポール・ホフマン著:草思社)だった。
このエルデシュ、とんでも無い人だ。
上にも書いたが生涯に1500も論文を書き、それぞれが超一流の内容になっている。
それと同等に(或いはそれ以上に)、その奇行でも彼は超有名な人だったらしい。

世界を放浪し、各国の有名な数学者の自宅のドアを朝4時に叩き、「きみの頭は営業中か?」と尋ねる。「俺の頭は営業中だぞ」と彼は言う。。

数学と子どもだけをこよなく愛すエルデシュは「博士の愛した数式」(小川洋子著、新潮社)の主人公に似ているな、と思ったら、「博士の愛した数式」の参考文献に「放浪の天才数学者エルデシュ」が挙げられていた。

1980年代にエルデシュは将来が楽しみな、ある高校生の話を耳にした。
ハーバード大学で数学を学びたいのだが、学資が足りなくて困っていた。
エルデシュは友人を通じて、彼に1000ドルを貸した。
そして「いつでも経済的に無理せずに返せる時が来たら返してくれたらいい」と告げた。

10年ほどたってその若者がようやく1000ドルを返せる時になって、「エルデシュは利子も期待しているだろうか?」と仲を仲介してくれた人に聞いた。

その仲介人がエルデシュに確認したら、彼はこう言った。
「彼にこう言ってくれ。その1000ドルで、わしがしたようにせよ、とね。」

「自分のやっていることが実生活に役立つかどうかなんてクソ食らえ」の数学者はさらに偉大な数学者を育てることになる。
そして、また一枚、神の手帖の1ページを開く。