●治験のあり方を考える(8)オーバークォリティー問題を考える

昨年、治験業界の界隈で話題になったこととして「オーバークォリティー」がある。
これは「え!そこまでやるの?」的、書類上の問題だ。
CRFへの医師のコメントの過剰なまでの求め方や治験関連の書類、必須文書関連の書類の残し方などを過剰にすることを一般的に指している。

この現象を当局は「オーバーリアクション」ではないかと言ったが、まさしく、そのとおりだ。

では、その「オーバーリアクション」の原因はどこあるのか?


そもそもこの「オーバーリアクション」としての「オーバークォリティー」はどのようにして発生するのか?

まず、書面調査、実地調査が行われる。
そこで当局の調査官が単純な疑問、感想を述べることがある。
それに対して申請者(=治験依頼者)が、過剰に反応して(オーバーリアクション)、「すわ、これは大変だ!こんなことまで調査で要求されるぞ!」と安直に反応してしまう。
すると、「今度から、この記録もこういうふうに残しておかないといけない。あの書類も、この書類も全部残しておこう!」などとなってしまう(オーバークォリティー)。

そして、この話が業界の「信頼性調査報告会」などで報告され、それが背景などもほとんど考えずに、どういう流れで調査官が発言したのか、ということにもおかまいなしに、業界全体に広まる。
こうなると、どこの製薬会社(CRO含む)も「あの会社が受けた調査でここまで調査官が調べたらしいから、医師にはここまでコメントを書いてもらわないといけない。」と連鎖反応的にオーバークォリティーが始まる。

この現象の原因は「自分で考えない」「お上が言うことが全てだ」的な治験依頼者の態度にある。
だから、逆に病院側の対応で疑問点が有っても「前回の当局の調査では何も指摘されませんでした」と言われると、そのまま鵜呑みにするという現象も起こる。

これらの現象を止めるためには、まず「自分で考える」というビジネスの基本に戻りことだ。
GCPだって、常識の範囲内で出来ているのだから、当局のおかしな質問に対しては「それはおかしい」ときちんと言うべきなのだ。

そこから始めようではないか。