ピーター・フランクルが数学者になったきっかけ

今週もNHKの「人間講座」のピーター・フランクルの話を聞いた。
http://www.nhk.or.jp/ningenkoza/200408/tue.html

彼が数学者になったきっかけはいくつも有った。

例えば、そもそも数学が好きだったということ。小さな頃からお姉さんの算数の九九を聞いて覚えたらしい。

さらにいろんな数学コンテストに出て、上位に入ったこと。
ハンガリーの偉大な数学者たちが協力して発行し続けた『ケマル』という雑誌との出会いもまたある。
 

しかし、彼の両親は彼を医者にしたかった。
何故か? それは、彼の家系がユダヤ人だったからだ。彼の親戚の多くは第二次大戦中に殺された。
しかし、彼の両親はどちらも医者だったので、殺されずに済んだ。
だから、彼の両親は子どもを医者にしたかったのだ。

そんな思いとは関係無く彼はどんどん数学にのめり込んで行く。
 

主な理由は次のとおり。

1)国内の数学コンテストで優勝したこと
2)世界数学コンテストで金メダルを取ったこと
3)優秀な友人や師が周りにいたこと
4)大学の教育制度が良かった(ハンガリーでは大学1年生から、ゼミをいつくでも取っても良い)


特に大学の教育制度はユニークだ。
日本では普通、教授クラスがゼミを担当し、学生は3,4年生の頃に一つのゼミに入る。
しかし、ハンガリーでは助手クラスから全講師がゼミを持っており、自分の得意な領域を少しでも多くの若い学生に伝えたいと頑張っているらしい。

きっと若い講師クラスでも、教授より人気のあるゼミも有ったことだろう。

そして彼が数学者になることを決定的に決めたのが、ボン・グラハムが講演した『組替え論』だった。
http://www.iis.it-hiroshima.ac.jp/~ohkawa/math/math_prob_arith_comb.htm


とにかく彼は生まれつき数学が好きという素質、素養が有った。
そして、幸運にも(あるいは自力で)、それを生かす環境が有り、多くの巡り合わせの結果、数学者になった。
 

番組の最後に彼はこう言った。

「もし、僕が医者になっていたら? とか商社に入っていたら? と考えることが有ります。でも、僕は数学者になって良かったと思います。
何故なら、医者や商社に入ったら、世界中でいろんな障害に会うでしょう。しかし、数学は世界のどこへ行っても変わらないからです。」
 

数学もそうだが、化学も物理も国が変わっても同じ方程式や構造式が使える。
数学なら、他の天体、惑星に行ったとしても使えるだろう。(特異点内部以外ね)

そういった共通の言語が使える分野というのは、楽しいと僕も実感する。
僕も学生の頃、有機化学の講演を英語で聞いたが、スライドの化学式を観ていれば、なんとなく理解できた。


これは「実生活に役立つ」とは全く別の世界だ。