錬金術師が作った狂気の青


葛飾北斎の「冨嶽三十六景」を生み出した「青」。
その北斎を愛したゴッホの「青」。
そして、ピカソを世に出した「青の時代」の「青」。

その青は、錬金術師が偶然作った青「プルシアン・ブルー」だ。

一歩使い方を間違えると、他の色を食ってしまう青なので、セザンヌは「危険な青だ」と手紙で友人たちに警告まで発している。


絵の具の色の作り方は、企業秘密に近い扱いだ。

ジアゾブルーで大きくなったドイツの化学メーカーにヘキストがある。
ヘキストは、そのジアゾブルーから医薬品の原料を作っていって、製薬会社に変貌する。
ヘキストは、その後、色んな製薬会社を吸収、合併し、今はアベンティス ファーマになった。



染料を作る化学技術は、そのままサルファ剤*1などの開発に応用された。


錬金術師が作った青が日本に渡り、それが「赤富士」を作り、それがヨーロッパに逆輸入されて、ゴッホを生み、ピカソを生む。

偶然の産物は、世界の歴史に欠かせない要素だ。

*1:サルファ剤は、sulfanilamide基をもった抗菌薬であり、細菌の葉酸合成を阻害する静菌作用を持つ。