牛の肉骨粉を分解、無害化…大阪府立大教授が技術開発

BSE(牛海綿状脳症狂牛病)の有力な感染源とされる牛の肉骨粉を、高温高圧の水を使って分解し、環境に優しい生分解性プラスチックや、電子材料の原料などに再生する技術を、大阪府立大大学院工学研究科の吉田弘之教授(57)(化学工学)が開発した。直接の病原体となる「異常プリオン」も無害化できるとしており、来年1月からのマウスを使った実験で安全性を確認し、2005年の実用化を目指す。

飼料などに使われていた肉骨粉は、BSEの感染拡大を防ぐため、2001年10月から利用が停止され、在庫などを焼却処分している。無害化技術が実用化されれば、焼却費用の削減や畜産資源の有効活用につながることが期待される。

吉田教授が利用したのは、水と水蒸気を200―300度、20―100気圧の高温高圧状態にした「亜臨界水」。たんぱく質などの高分子を細かく分解する特性があり、密閉容器内で肉骨粉を1―5分間、接触させる。実験では、異常プリオンとよく似た分子構造のたんぱく質も複数のアミノ酸に分解されている。実際の異常プリオンの分解水を使ったマウス試験を専門機関と共同で行い、BSEが発症しないことを確認する考えだ。

肉骨粉は分解直後は液状だが、常温常圧に戻すと、乳酸やアミノ酸などの水溶液、リン酸カルシウムの粉末、油の3層に分離する。それぞれを個別に取り出せば、生分解性プラスチック、医薬品、電子材料などの原料や燃料にできる。

異常プリオン=人間や牛など動物の体内にあるたんぱく質プリオン」の構造が変化してできる。正常なプリオンを次々と異常型に組み替えて脳などに蓄積し、神経細胞を破壊して牛のBSEなどの「プリオン病」を引き起こす。