インフルエンザ不足深刻

 インフルエンザのワクチンが一部医療機関で不足している問題で、厚生労働省はメーカーなどに直接働きかけ、ワクチンの足りない地域へ配分してもらう異例の措置に乗り出した。

 新型肺炎重症急性呼吸器症候群=SARS)対策の余波で不足が表面化した11月以降、厚労省都道府県に対し、医療機関同士で融通させるなどして供給調整に努めるよう指導してきたが、状況が好転しないためメーカーや卸会社に協力を呼びかけた。

 ワクチンがなくなっている医療機関を抱える自治体は19日現在、計37都道府県。このうち、厚労省の働きかけによって、県内の医療機関同士で融通のめどが立たなかった鳥取、佐賀、長崎の3県には今月に入り、計6500本(約1万3000人分)が送られた。

 また3県に次いで不足が目立つ東京、千葉、富山、滋賀、京都、徳島、沖縄の7都府県にもワクチンメーカーから提供を受けた計3070本(約6150人分)のワクチンが届いた。メーカーは、在庫に余裕のある医療機関に対して納入を断るなどしてワクチンをそろえたという。

 インフルエンザの予防接種は学童に限って公費による集団接種が行われてきたが、副作用の懸念が広がり1994年以降、任意になった。今冬は昨年より4割多い1480万本が生産されているが、在庫が特定の大手病院などに偏っていることが不足原因とみられる。メーカーから卸会社に送られたワクチンは高齢者の接種希望者の多い医療機関などへ優先配布される。

 ◆小児用シロップ薬供給量、減少見通し◆

 厚生労働省は19日、中外製薬(東京)が輸入販売している抗インフルエンザ薬「タミフル」のうち、小児用ドライシロップの供給量が当初見込みより約25%減少すると発表した。昨シーズンのインフルエンザ流行時、ドライシロップが極端な品不足に陥ったため、同社は今冬の調達量を増やし、1歳―10歳人口の約半数に近い470万人分を出荷予定としていた。

 ところが、同社がスイスから輸入したドライシロップを検査したところ、一部に神経疾患のパーキンソン病の治療薬が微量混入していることが判明。薬を運搬容器に充てんする装置の洗浄が不十分だったのが混入の原因という。混入分の出荷を取りやめたため、出荷量は当初見込みを110万人分下回り、360万人分にとどまる見通し。