治験プロジェクトを完遂させる方法

今回のタイトルは本当なら「治験プロジェクトを“成功”させる方法」と書きたかったのだが、治験の場合、どうあがいても失敗することも多々あるので、とりあえず最後までメンバーの全員がモチベーション高く完遂させることを考える、というタイトルにした。

今年の4月に入ってきた新入社員の皆さんも、3ヶ月が過ぎ、そろそろ会社や社会人生活に慣れてきた頃と思う。

でも、まぁ、まだモニターとして一人で施設に行ける状態ではないかな。(書類を運ぶくらいなら、もちろんできるだろうが、SDVなんて、まだ無理でしょう。)

その新人モニターが例えば最初に配属された治験プロジェクトが3年に渡るものだとしましょう。

最初の1年はとにかく、何が何やら分からないままガムシャラに、とにかく、期限を守らなくちゃ!という感じで仕事をやる。

ときには失敗もし、施設に先輩や上司と一緒に謝りに行ったりしてね。

2年目になると、そろそろ仕事そのものには慣れてくるのだが、治験が新しい局面に入るので(例えば、最初の1年目は施設の調査・選定から依頼、治験薬の搬入、創薬ボランティアの登録依頼などだが、2年目になるとCRFの作成促進、SDV、CRFの回収と固定などが多くなる)、それはそれで、忙しい毎日を過ごすことになる。

そして、最後の3年目は治験を収束に向かわせるために、最後の頑張りでCRFの完全固定、必須文書の確認、終了手続き、そして、治験結果を待つ。


こうしてみると、新人にとっては3年間が、ずっと初体験の連続で、仕事に張り合いが出て、とても転職なんて考えられないように思うかもしれないが、実はこの最初の3年間で転職する人がかなりいる。

僕が所属したことがある会社の形態で言うと、圧倒的に転職が多いのは外資系製薬会社で、次がCRO、まずほとんど無いのが内資系製薬会社だ。

外資系とCROに転職が多い理由の一つに、もともと上司だって、転職してその会社に来た、というのがある。

内資系製薬会社で働いていた時には、同僚や上司が転職していくというのはほとんど無かった。

一方で、外資系の場合、転職で入ってくる人はいるわ、出て行く人はいるわで、つまり、転職が「日常」なのだ。

CROも、日本ではまだ歴史の浅い業界なので、立ち上げ当時は製薬会社からの中途採用が多い(即ち転職だ)。

一度、転職で入って来た人は、転職でその会社を出て行くことにも抵抗は無い。

そういう上司を見て育つ新人たちも、「へー、会社って、そんなもんなんだ。」ということで、内資系製薬会社に入った新入社員に比べてはるかに転職に対して「違和感」や「抵抗」はない、というのが僕の見解だ。


こういう(転職の多い)世界で治験のプロジェクトを成功させるためには、リーダーは何をすればいいのだろうか?

多分、こういうリーダーに求められるのは、メンバーの心を、未来のある一点に向けさせる能力だ。

その一点とは「このプロジェクトが終わった時に訪れるもの」だ。


例えば、このプロジェクトが終われば新薬をひとつ、世の中に提供できる(社会貢献)、とか、ボーナスが上がるとか昇給、昇進するとか(社内的成功)、あるいは、自分が成長していること(人間としての成長)や達成感、満足感かもしれない。

リーダーは個々のメンバー性格や特性を見ながら、そのメンバーに合った「期待される未来」を具体的に提示し、そのメンバーの心を、その一点に向ける必要がある。


こうすることにより、リーダーは、メンバー全員をプロジェクト完遂に向かわせる。途中で転職させずにね。


転職する理由は様々だ。モチベーションが上がらない、人間関係、給料が安い、常に超多忙だ、会社の風土が肌に合わない、など等。

こういう人たちも含めて、最後には治験を完遂させないといけない。

でも、実はこれは転職対策だけでなく、転職の少ない内資系製薬会社でも同様なのだ。

モチベーションが下がる、モラルが下がる、異動願いが多発する、など等。


『治験プロジェクトを完遂させる方法』はリーダーが目的地を明確にし、メンバーが全員、そこを目指す(当然、チームワークも要求される)ようにすること。


そして、それは会社生活を完遂させる方法にも言えることだ(たとえ、会社名が変わったとしても)。



架空(仮想)の製薬会社「ホーライ製薬」


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