新人モニターに伝えなければいけないこと、伝えたいこと
新入社員の研修の一週間目が終わった。
しかし、彼ら・彼女らはまだ治験の本当の「怖さ」と「素晴らしさ」を知らない。
彼ら・彼女らはまだ、厳しく個人の倫理観が問われる治験を知らない。
ときに油断をすると創薬ボランティアの安全性を脅かしかねないプロトコル逸脱が多発することを知らない。
モニターのちょっとした怠け心、甘えにより、治験が根本から崩れ去ることがあることも知らない。
少なからずの治験薬がプラセボに負けて、開発を中止することがあることも身に沁みて分かっていない。
彼ら・彼女らが夢見ているのは「夢のような新薬の開発」に携わる自分だ。
もちろん、その夢を無残に砕く必要はないが、かと言って「甘い話」ばかりもしていられない。
世間ではGCPをきちんと守ってくれる治験責任医師と治験分担医師ばかりではないことを知らないといけない。
また、GCPすら満足に教えられずに現場に出される不幸なモニターやCRCも皆無ではないことを知らないといけない。
しかし、そんな危うさも持ち合わせた治験の面白さ、素晴らしさを伝えることもまた必要だ。
僕たちが携わっている治験は科学の真理への一里塚でもある。
想像以上に美しい結果が出る治験もある。
今まで不治の病と言われた病気に一縷の光が差し込むこともある。
そして、僕たちモニターやCRCは常に夢の途中を歩く職業であることを教えてもみたい。
僕が今、やっている導入研修の2週間目はいよいよ1つの山場を迎える。
GCPの解説を二日間に渡って行う予定だ。
GCPの根底に流れるヘルシンキ宣言の精神や創薬ボランティアの辛い立場を教えながらのGCP解説になる予定。
それでいて、可能な限り、研修中にできるだけ多くのGCPの条文と注意点を教えなければならない。(そうなるように研修のプログラムを作るのも、実は一苦労なのだが。)
そして、そんな研修を通して僕が求めているのは「触れたら火傷しそうな熱い魂」を持ったモニターの発掘だ。
今年はそういうモニターが何人が育ってくれるだろう?
去年の新人モニター(今年で2年目)が、今年の新人モニターに治験の醍醐味や辛さ、面白さを伝える場面を見たのだが、とっても嬉しかった。
あれから1年しかたっていないのにね。きちんと成長してくれていることが垣間見られた。
僕ら、講師の仕事で最も大事なことは、自分(講師)を難なく超えていくモニターを育てることだ。
そして、夢の途中を一緒に歩いていく旅人たちと巡り会うことだ。
この醍醐味がまた楽しくて、今年も講師をやっている僕なのでした。