3.行く先々に証明有り


エルデシュおじさんは、1996年9月20日に83歳で亡くなられた。

発表した論文は共著を含めて1475本にのぼる。
その多くは記念碑的な発表であり、そのどれもが重要なものらしい。

真に驚くべきことは、その量ではなく、その質の高さだそうだ。

エルデシュおじさんは、70歳を過ぎてから論文を50本発表した。
これだけでも、多くの優れた数学者が一生かかって書く論文の数より多い。

彼は家族も持たず、家も持たず、職務も、趣味も持たずに、粗末なスーツケース一つで、優れた数学の問題と新たな才能を探す終りの無い旅を続けながら、四大陸を驚異的なペースで飛び交い、大学や研究センターを次々と移動して回った。

知り合いの数学者の家の戸口に忽然と現れ、「わしの頭は営業中だ」と宣言する。

そして、一日か二日、彼が退屈するか、ホストが疲れきってしまうかするまで一緒に問題を解く。

それから、次の数学者の家へ移るという具合だった。


つまり、エルデシュおじさんの場合「行く先々に女」ではなく「行く先々に証明」だった。