体内時計を逆転させる

世界各地で、体内時計の逆行に取り組む科学者たちがいる。彼らの研究
は、病気の新たな治療法を探すうえで、クローン胚の利用よりもさらに
先を見据えている。


伝説の「青春の泉」(若返りの泉)を探し求める研究者は、数は少ないが
増加しつつある。だが彼らは、自分たちの研究には、野球殿堂入りした
今は亡き大リーガー、テッド・ウィリアムズ氏の遺体の冷凍保存に使わ
れた極低温技術をはじめとする、延命に応用されるにわかには信じがた
い科学技術の数々との類似性はまるでないと強調している。


体内時計の逆行に取り組む科学者たちが目指すのは、古い細胞を若返ら
せ、早い段階の細胞が秘めている治癒力をそのまま古い細胞にも与える
ことだ。

目標の達成にはこれからも長期間の研究が必要だが、研究者たちは細胞
の老化を逆行させる、いわば生物学的なタイムマシンの開発に熱心に取
り組んでいる。

一部の研究者は、ヒトの卵細胞――女性の体のなかで、死ぬようにプロ
グラムされていない唯一の細胞――の「魔法の因子」を模倣すること
で、体内時計をリセットしようと試みている。

また、サンショウウオ類の足の再生にかかわる分子を特定しようと取り組む研究者もいる。
ほかにも、サンディエゴの化学者チームが、「リバーシン」という、マ
ウスの筋肉細胞の成長をリセットする化合物を作りだしている。

傷ついたイモリの脚の細胞が再び成長を始めるように、マウスの筋肉が再生するのだ。

いつの日か、こうした研究成果が再生医療を実現するかもしれない。
つまり、患者の肌の細胞を胚のような状態にまで戻し、それを使って、
衰えつつある臓器の代わりとなる組織を育てることも可能になる。


現在、こうした研究が追究している最大の目標は、現時点では依然とし
て理論上の存在でしかない、1つの細胞からヒトの身体の発現を促すき
っかけとなる遺伝子を発見することだ。


スコットランドと日本の研究者たちが昨年、マウスの持つ「不死遺伝
子」を特定することに成功した。

この遺伝子を使えば、実験室内で幹細胞を無期限に成長させられる。

この遺伝子は、ケルト神話に登場する不老不死の国『ティル・ナ・ノ
ー』にちなんで『Nanog』と命名された。

この発見を受けて、同様のヒト遺伝子を発見する競争が加速し、これま
長年にわたってこうしたテーマを黙って真剣に追究してきた科学者た
ち、はじめて公然と議論を行なうようになった。

クローニングおよび幹細胞研究の第一人者、 ホセ・シベリ教授(ミシガ
ン州立大学)は「われわれは卵子のなかに、探し求めてきたマスター遺
伝子が発見できるのではないかと夢見ている。青春の泉は、卵子のなか
にあるのだ」と述べている。


シベリ教授をはじめとする研究者たちの目標は、細胞をプログラムし直
し、老化プロセスを逆行させ――幹細胞にまで戻すことにある。

なかでも最も求められているのは、胚性幹細胞(ES細胞)だ。

ES細胞は、受精後数日で形成され、人体全体を形成していく。

科学者たちは、未分化のES細胞が持つこうした強力な能力を利用して、
この細胞を失われたり損傷したりした細胞の代替物へと育て、アルツハ
イマー病から脊髄損傷にいたるさまざまな病気の治療に役立てたいと考
えている。


果たして、魔法の元となる「マスター遺伝子」---マウスの持つ不死遺伝子「Nanog」にあたるもの----を発見できる日が来るのか?

ひょっとしたら、それは明日かもしれない。

僕は、要らないが、あなたはどう?

何も考えずに5000年生きるのは、何かを考えて生きる50年より勝っていると言えるだろうか?



http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9874/