今年のワクチンは効かない?アメリカ

 インフルエンザ予防ワクチンの専門家による委員会が昨冬、この冬に向けて製造すべきワクチンについて協議を行なった。選択肢は2つあったが、そのどちらも確実なものとは思えなかった。

 新種のウイルスが勢力を拡大させる兆候があったとはいえ、前年の処方を踏襲するべきだろうか? それとも、なんらかの面倒な事態、ワクチン不足、供給不能にすら陥りかねないリスクを負ってまでも、新しいワクチンの製造を試みるべきだろうか?

 採決の結果、委員会は、17対1の圧倒的多数で前年と同じワクチンの製造を勧告することになった。接種を待つ多くの米国市民に対し、実のところワクチンは大して効き目がないかもしれない、と白状することになる事態を危惧しながら――。

 コロラド大学のセオドア・アイッコフ教授は、「長年この委員会の審議に参加してきたが、勧告にこれほど自信を持てないことは今回が初めてだ」と話した。委員の多くはたぶん同じ気持ちだっただろう。

 そして、まさにアイッコフ教授ら委員が恐れていたとおりになった。今年は例年になく早く、秋からインフルエンザの流行が始まったが、新種のインフルエンザが、実に全体の4分の3を占めるまでになっているのだ。

 およそ8300万人分のワクチンが製造されたが、それがどれだけ有効なのかは誰にもわからない。インフルエンザ・ワクチンは通常、70〜90%効果があるとされるが、今年はそうした効果が期待できないのはほぼ確かで、専門家のあいだでは、50%にも達しないとの悲観的な見方すらある。