●治験のあり方を考える(5)日本の治験の促進方法(2)

治験が開始される場面は、まず医師が患者に治験に参加する意思がないか、打診するところから始まる。
だから、どれだけ医師が患者に治験参加について打診したか、に治験促進はかかっている(と言うことは、医師と患者の間に立つCRCにも最終的には治験促進はかかっている)。


日本において治験が進まない理由のひとつとして「治験を行う医師にインセンティブが無い」ことがあげられている。
たとえば、治験に関連した論文は学術的意義が低いとか、苦労の割には金銭的に報われない(特に公務委員の場合)、日常診療が忙しすぎるなどなどの理由だ。


また、患者側としても「治験に参加する意義」がほとんど感じられないということもある。
ただし、実際に治験に参加した患者のアンケート結果によれば、実際に治験に参加して良かった、という答えが多い。
その理由は「社会に役立つから」とか「診察時間が長く、濃くなったから」などがある。
とは言っても、患者全体(僕を含めて)から見れば、これらの意見はまだ少数意見であろう。



逆に「何故、治験に参加しないのか」というアンケート結果からは「不安だから」が圧倒的に多い。
確かに不安だ。
既に治療薬がほかに有るのなら、なにもわざわざ効果や安全性のデータが少ない治験薬を使って欲しくない、と思うのは患者としては当然だろう。

そこで、医師に対しても患者に対しても参加しなくてもいい当然の状況を乗り越えてもらうためには「治験の意義」への理解が何と言っても重要となる。

もちろん、治験の意義に理解を示されたからといって患者には治験に参加する義務が生じない。
しかし、治験への理解無しに治験参加の意義を見出すことは、今のところ少ない。(他に治療薬が無いなら話は別だが。)

それでは「治験の意義」とは何であろうか?



架空(仮想)の製薬会社「ホーライ製薬」

臨床試験、治験を考える「医薬品ができるまで」