「イノベーション25」と「治験活性化」の関係

最近、製薬業界では「医薬品」が安倍内閣総理大臣の「イノベーション25」の1丁目1番地に取り上げられたことがよく言及される。

(下記「第166回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説」参照)


このことを医薬品業界は「大いに期待されている」と喜んでいる人もいるが(いてもいいのだが)、普通はびびる。


総理大臣が、いの一番に取り上げたということは、「医薬品」で、今後、「イノベーション25」に相応しい成果が求められるということだ。


例えば総理の言葉の中に「がんや認知症に“劇的な効果”を持つ医薬品の開発などの実現」と言う言葉がある。(下記参照)

がんや認知症にに「良好な効果」とか「素晴らしい効果」ではなく、『“劇的”な効果』ですよ、『“劇的”な効果』!(この言葉に難色を示した官僚もいるようだけれどね。)

ドラスティックに効く薬を求めているのです。

まぁ、総理が求めていなくても、日本全国の一般国民の民様も“劇的な効果”を持つ医薬品を「1300年以上前から」求めているのですから、何を今更、という考えの人もいるでしょう。


でも、総理が言ったのですから、それなりの予算もつくでしょうし、トップダウンの改革命令がでるかもしれません。

そんなときに「それはできません」とか「今までに前例がありません」とか「日本の医療風土にあいません」なんて言っているようではいけません。

なにしろ「イノベーション」の最も大敵は前例主義なのですから。



以前、僕が勤めていたある製薬会社で「こんなことができたらいいのにな」と思ったことがあり、それを実現するためには「IT部門」の協力が必要でした。

そこで、IT部門の若手に「こんなことするために、IT関係ではこういうことをやって欲しいんだけれど」と言ったら「それは我が社のITポリシーに触れますのでできません。」とか「それは会社の方針でできません」と言われた。

この「会社の方針です」という言葉を言うときは気をつけないといけない。「会社の方針です」とか「会社のポリシーに触れます」と言ったとたんに、自分で考えることを停止するからだ。

「会社の方針でできない」と言え「そこをどうにか工夫して」という思考回路を使わなくなる。(若いのに可哀想なやつだと、僕はそのとき、思った。)

で、その後2ヵ月後に新しい事業部長が赴任して、そのひとに僕のアイディアを伝えたら、その場でIT部門に電話して、あっという間に僕のアイディアが実現した。

アイディアが実現したのは嬉しいのですが、なんか拍子抜けしたね。

今度、「それは会社のポリシーできません」なんて言ったら、「そんなポリシーなんて捨てちまえ!」と言いたい。

(残念ながら、僕はもう別の会社にいるのだが。)



「治験の活性化」を考えるときも同様だ。

「それは日本の医療風土に合いません」なんて言っていたら、いつまでたってもその「医療風土」から脱却できない患者さんが医療難民になっちまうよ。

だったら、そんな「医療風土」なんて捨てちまえ!






第166回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説 (平成19年1月26日 )

http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/01/26sisei.html


約100年前、権威ある物理学者が「空気より重い空飛ぶ機械は不可能である」と断言したわずか8年後、ライト兄弟が初の有人飛行に成功しました。

絶え間のないイノベーションが人類の将来の可能性を切り拓き、成長の大きな原動力になります。

2025年までを視野に入れた、長期の戦略指針「イノベーション25」を5月までに策定し、がんや認知症に劇的な効果を持つ医薬品の開発などの実現に向けた戦略的な支援や、各国の特許制度の共通化への取組など、具体的な政策を実行します。


イノベーションにあわせ、ICT産業の国際競争力を強化するとともに、医療、農業など将来有望な分野で残る規制の改革やITの本格的活用により事業の効率性を高めるため、4月を目途に生産性加速プログラムを取りまとめます。減価償却に関する税制度を約40年ぶりに抜本的に見直し、投資の促進を図ります。