もちろん治験の活性化はあなたしだいです

治験事務局、IRB事務局の皆さんには、今の日本の治験をフルサポートしているのは(実質、動かしているのは)自分なんだと知っておいて欲しい。

あんなに複雑なGCPの手続を滞りなく院内で(しかもほとんど治験に理解を示さない人たちの間で)やってくださっていることには、本当に頭が下がる。(時にはGCPをまだあまり理解していないモニターなんかがいて、困ることもあるでしょう。)

これからも、是非、治験の促進、日本の治験の空洞化阻止には、治験をスムーズに行わせている自分が必要なんだと治験事務局やIRB事務局の方には思って欲しいところです。

煩わしいと言われながらも、手続き上で省けないものは省かず、省略できるところは簡略化して、治験を少しでも早く進めることが出来るのは、治験の資料、手続を受け持つ事務局の私しだいだということを是非、再認識してください(もちろん、もう十分にご理解しているとは思いますが。)

IRB事務局の人も、IRBメンバーの都合やら会議室の都合から、膨大な副作用情報の処理など、困っていることも多いでしょう。
しかし、今度の改正GCP省令をご覧頂くと分かるように、IRBとIRB事務局の仕事の重要性は増すばかりです。

治験が倫理的に、創薬ボランティアの人権、安全、福祉を守って行えるのはIRBの委員と事務局の自分たちがあるからこそだということを強く誇りに思うべきです。

そして、これからも日本の治験の活性化には、治験事務局、IRB事務局であるあなたの創意工夫や熱意が必要なのです。



治験責任医師や治験分担医師の方々はまず「自分がしっかりしないと治験は進まない」ことを強く思ってほしいところです。

日本の治験を促進させる、なおかつ質を保つのは、治験責任医師や治験分担医師の仕事だということ。
そのためにはまず、自分が担当した治験薬の特徴をしっかりと認識していただけたらと思います。

今、目の前にいる患者さんにこの治験薬を投与した時のメリットは何だろう?あるいはリスクはどんなことがあるのか、などを考える。

また、この治験薬が新薬として臨床の現場に出てきたときのインパクトも是非、考えてください。

自分の治療方針のどの位置にこの治験薬はポジショニングされるのか、どのような患者さんに有効で、どのような疾患、どの程度の症状なら治癒できるのか・・・・・・etc.

そのような治験薬を一日も早く世の中に出すためには、まず、治験実施計画書をしっかり守ってください。
「こんな臨床の現場を無視したようなプロトコルなんて、守られるかい!」と思うなら、その言葉を是非、治験依頼者にぶつけるべきです。

そして、もし納得して治験を実施して頂けるのであれば、治験に参加して頂ける創薬ボランティアの発掘に力を注いで欲しいと思います。

とにかく、医療の現場の最先端にいて、今の日本の治験の現状を救えるのは自分なんだと治験責任医師や治験分担医師の方は再認識してください(もちろん、もう十分にご理解しているとは思いますが)。

治験の活性化に治験責任医師、治験分担医師が果たす役割は計り知れない(というか欠かせない)。



CRC(治験コーディネーター、臨床試験コーディネータ)の皆さんは、「これからの日本の治験は私の肩にかかっている」という気概を持って欲しいと思います(僕に言われるまでもないとは思いますが。)

まさに、CRCはかつての日本の治験の空洞化を救ってくれた救世主です。

そして、それは、これからの治験でも同じです。

僕も商売柄、多くのモニターの話を聴きますが「しっかりとしたCRCがいる病院は治験がやりやすいし、創薬ボランティアの登録も早く、データの信頼性も高い」と評判がとてもいいです。

だから、日本の「治験の質」と「スピード」はCRCである私にかかっていると思ってください。

CRCがしっかりしないで、これからの日本の治験はありえない。「日本の治験の将来は私次第だ」とCRCの方は再認識してください(もちろん、もう十分にご理解しているとは思いますが)。



モニターの皆さんは『治験を生かすも殺すもモニター次第』という言葉を忘れないでください。
「モニターの一日」より。)


まさにそのとおりで、どんなに素晴らしい新薬の卵だろうと、どんなに優れたプロトコルだろうと、それを生かすも殺すもモニター次第です
モニターは治験依頼者と治験実施医療機関のあいだの情報伝達の主役です(GCPに書いてあるとおり)。

治験を実施するにふさわしい治験責任医師、医療機関を調査し、速やかに治験の依頼・契約をすませ、治験がスムーズに進むようにモニタリングを実施し、プロトコル違反、GCP不遵守が発生しないように、関係者に注意を促す。

もし、それを怠ったら、新薬が世の中にでるのが数年は遅れるかもしれません。
最悪は二度と日の目を見ないことになりかねないことを常に意識しましょう(そうなった新薬の卵を僕は身近に知っている)。


監査やDM、統計解析、治験薬の管理、品質管理者、教育担当者・・・・・・etc、ありとあらゆる治験業務に関わっている人は、治験の活性化は自分しだいであることを再認識しましょう。

自分ごときがいくら言っても、何をやっても日本の治験なんて変わらないさ、とか、何年たっても日本の治験の状況は変わらないじゃないか、いったい、当局は何をやっているんだ、と思っているうちは「あなたの治験の活性化」は変わりません。

日本の治験の活性化計画なんて自分には関係ないと思うか、自分のことでもあると(と言うか、これこそ治験で生活している自分の課題だと)思うのかによって、「あなたの治験の活性化」は変わります。

そして何よりも「あなたの世界」が変わります。

あなたが変われば世界が変わります。


臨床試験と治験を考える「医薬品ができるまで」